遺品整理はまず見積もりから
―遺品整理、どんな方からのご依頼がありますか?
吉岡:遺品の量が多いのでとても自分達だけでは難しいとか、ご遺族がご高齢で片づける体力に自信がないとか、忙しいので時間が取れないなど、そういった方からご相談があります。
―どのようにお話が進むのでしょうか。
吉岡:ご相談内容を伺って、見積もりに伺う日にちを決めます。見積もりにご納得いただいた上で、具体的な作業日程を決める、という流れです。
―どんな風に見積もりをするのですか、電話だけでは難しいでしょうか?
吉岡:ほとんどの場合、実際に整理をする故人さまのお宅へ伺います。当社では、トラックの台数や作業人員数でなく、片づける遺品の量を測って見積金額を出すので、この「量を測る」ということはとても重要なんです。
―物量?部屋の大きさとか、タンスが何竿とかそういうことではなく?
吉岡:タンスも全く同じ大きさのものばかりではありません。家電などもそうですよね。電話で伺っただけですと、準備するトラックの大きさや必要な人員が正確に分からないので。 今は物量を測るための特別な機械がありますから、時間がかからずに測量できるんですよ。
―すごいですね。それなら見積金額、一目瞭然ですね!
吉岡:みなさん、こんな便利なものがあるの、と驚かれますね(笑)。 私たちは、遺品を見ればだいたいの検討が付きますが、目算だけだとやはり不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。こうした機械を使い、一緒に確認してもらうことで、ご納得していただけるという良さもあります。
―お客様の信頼と仕事の効率化が同時に、と。
吉岡:正確に測ることで、こちらもどのようなトラックでうかがうべきかわかります。 トラックにもいろいろありますから。同じトラックでも、5㎥、10㎥、15㎥、20㎥と積載可能な容積が違うんですよ。
遺品整理の当日は、相続財産を探すことからスタート
―実際に遺品整理はどのようにおこなうのですか?
吉岡:当日はご遺族の方や関係者の方に立ち会っていただきます。 ご遺族が一番心配されるのが、遺品の中に、相続財産になるものがあるかどうかだと思うんです。 私たちも、後々トラブルになるのを防ぐためにも、慎重に対応しています。 まず、銀行の通帳とか、貴金属とか、株券とかそういったお金に関係するものを探すことからスタートします。また、写真とかアルバムなどは、金銭的な価値はないかもしれませんが、ご遺族にとっては、やはり思い出深いものだと思いますので、同じようにあつかっています。
―立ち会うのはどんな方ですか?
吉岡:ご主人様が亡くなられたときは、その奥様やそのお子さんですね。他にはご兄弟という感じでしょうか。 相続人としての関係が深い方が立ち会うことがやはり多いです。 おひとりで亡くなった場合など、ご親族もいない方のケースは、弁護士さんや役所の方が立ち会われることもあります。
―もし立ち会えないときは?
吉岡:私たちだけでおこないますが、事前に大事なものが何かを伺っておきます。 もし、作業中に迷うときは、その場でお電話をして確かめるようにします。
―搬出された遺品は処分されるのでしょうか?
吉岡:お客様が遺産相続に必要なものとして引き取られたもの以外で、まだ使えそうなものがあればリユースするようにしています。
遺品整理の荷物も引っ越しと同じ。プライバシーを大切に、思い出を壊さないように……
吉岡:先ほどトラックの話しをしましたよね。
―はい、量をしっかりと見積もるというお話でした。
吉岡:実は、それ以外にも大切にしていることがあります。当社は、トラックは箱型を使っているんです。 箱型というのは、外から中が見えないタイプのトラックです。荷台に荷物を載せて、覆いかぶせるという運び方もありますが、当社では極力しません。運搬中も中の荷物が見えないように、故人さまやご遺族のプライバシーにも配慮しています。
―徹底されているんですね。他にも遺品整理をするときに心がけていることはありますか?
吉岡:私たちがおこなっているのは遺品整理なんですが、引っ越しと同じように、故人さまのお荷物を移動する、という考え方で仕事をするようにしています。これは社員全員にも強く伝えています。かたちのあるものはそのままのかたちでお運びする。もし、目の前で思い出の品を壊されていくのを見たらどんな気持ちになるかということですね。自分だったらどう思うか、が大切なんです。
遺品で触れる故人の最後の時間
―思い出に残っているお仕事はありますか?
吉岡:全く疎遠になっていたお父様が亡くなって、自分が相続することになったので、遺品を整理してほしいというご依頼だったんです。もう全然会っていないので、どんな生活をしていたのかもわからないから、とにかく整理してくれれば良いというご意向で。 立ち会ってはくださるというので、当日、一緒に家に入ったんです。そうしたら、タンスの上に、その方が子供の頃の姿でお父様と写った写真が大事に飾られていたのを見つけたんです。ご依頼者は、その場で泣き崩れられました。自分は忘れられてなかった、と。 最後の最後に氷塊した親子の縁の瞬間に関われたこと、この仕事をしていたからこそ体験できたことだと思います。
―本当に良かったですね。
吉岡:ええ。反対に、ショックを受けられることもあります。やはり、ご家族と疎遠にされていた方が遺品整理を引き受けられたケースなんですが、行ってみたら、部屋の中は、それはもう、天井につきそうな程に山積みにされたゴミ屋敷だったというのもあります。その時は、立ち会いの方は、とても部屋に入れないとのことで、屋外で品物のご確認をいただきました。 お住まいや遺品の状態を見ると故人さまが最後にどのようにご苦労されて生活をされていたのかがわかるだけに辛い思いをすることもあります。
―最近増えてきたご相談は?
吉岡:核家族化とか、少子高齢化の影響なんでしょうか、親戚とは音信普通だったのに、急に警察から電話が来て、しぶしぶ遺品整理をされる方なども増えてきた気が来ます。 貴金属などがあるかもしれなので、本当は一緒にお部屋に入っていただきたいのですが、ほとんど知らない人の家ということで、やはり入ることをためらわれますね。
―時代によって遺品に変化がありますか?
吉岡:スマホとかパソコンですね。デジタル遺品と呼ばれるものです。中を見たいということになると、専門の業者に頼むことになるのですが、どうしても見られないときもあるようですよ。
遺品整理を依頼するときは、遺品をどうしたいのか決めておくとスムーズに
―遺品整理をお願いするときのアドバイスをいただけますか
吉岡:遺品整理を頼みたいけれど、何から話したらいいのかわからない方も多くいらっしゃると思います。是非、遠慮なく、なんでも話していただきたいです。もし、遺品で買い取りをご希望されるものがあれば、そういったご相談もお受けしています。 どういう状況で亡くなったのかというのは、言いづらいかもしれません。たとえば、お部屋でお亡くなりになって、かなり時間が経ってから発見されたなどです。ですが、立ち合いの方が入りづらい状態か分かりますし、何を重点に整理すればいいのか話が進めやすくなりますので、お話いただけると大変助かります。
―吉岡社長、ありがとうございました。